SFC版のIIIでは、シナリオ上、この点に多少のフォローが入っている。母親は「娘のおまえをこの日のため 勇敢な男の子のように育てたつもりです」、王様は「よくぞ 来た!勇敢なる オルテガの息子……いや……娘じゃったか…しかし男に勝るとも劣らぬその精悍さ。さすがオルテガの子供じゃな」、さらに街の人は「あなたがあの勇敢だったオルテガの息子さんか?なに?娘?おおっこれは失礼した」などなど、男っぽく装っているのは変わらないものの、「男の子と間違えられる」という軽いギャグとして処理されているのである(そういえばオルテガ本人と間違えられていたこともあった…)。
IIIとIVの勇者に共通するのは、主人公が幼時より「勇者」となるべく育てられていた点である。Iでは最も原型的な英雄譚として、男性性の象徴である勇者は冒険の報酬として姫を手に入れる。IIでは勇者のキャラクタそのものが男女に分割されている。さらに父子三代に受け継がれる使命をテーマとしたV、王子でもある勇者を中心とした群像劇の性格が強いVI、いずれもドラマ上の主人公は確固たるキャラクタであり、女性性の入り込む余地はない。ところが、III、IVでは、主人公は「勇者であること」によってのみ主人公たりうるのである。逆にいえば、女性であっても「勇者」として主人公でありうるのがIIIとIVの物語だった。IIIでは父である勇者オルテガの後継者として、IVでは天空人の末裔として、半ば本人の意思によらず周囲の状況が彼女に勇者として生きるべく強いる。「勇者」という、本質的に男性性の役割を演じざるをえない女の子――というのが、実は女勇者の魅力なのではなかろうか。
能書きはこれくらいにして本題(?)に入ると、実はSFC版のIIIでは勇者も男女で別のグラフィックが用意されていることが判明したのです。実は私は、不覚にも人に指摘されるまで気づいてませんでした。だってほとんど同じなんだもん。とはいえ、感覚的に「少し違う?」というのはわかってるはずだったんですけどねぇ。考えてみれば他の職業は全て男女別なわけですし、水着などを装備するとグラフィックも変化するようになってますから別なのは当然なんですね。
ともあれ、下にそれぞれのグラフィックを紹介するので見比べてみて下さい。これは鳥山明が新しくデザインを起こしたのではなく、「男勇者のデザインを元に女っぽくした」という珍しい例だと思います。よく見ると女の方が多少小柄で、髪の毛もややトンガってない、という程度で、基本的にはほとんど同じです。
勇者・男 | 勇者・女 |
女勇者の水着姿は、みなさんが自分の目で確かめて下さい(笑)。
アリアハンの東、サマンオサ大陸南端にある海賊のアジト。レッドオーブを入手する際に海賊のおかしらに会うと、「魔王を倒したらぜひまた寄ってくれ」と言われます。ちゃんと会いに行きましたか?バラモスを倒した後で訪れると、男勇者だと何も起きないのですが、女勇者の場合、「女だてらに魔王を倒したってことだし」気が合いそうだということで、一晩つき合わないかという話になります。
そこで差し向かいで酒を飲みながら四方山話に花が咲くことになるんですが、おかしらの質問「あんたも、あたいみたいに男には絶対負けないって思ってるのかい?」に対して「はい」と答えると、「ふうん、意外だね。あんたはてっきりただの○○ってカンジだと思ってたけど」とズバリ性格を言い当てられ(笑)、「それとも、これからはあたいみたいな生き方をしたいってわけかい?」とくるので、「はい」と答えると、性格が彼女と同じ「おとこまさり」に変わります。なるほど、ウマイ。
このおかしら、先代のおかしらの一人娘で跡目として厳しく育てられ、女だてらに荒くれ男どもを統率しているという設定。「おかしらはイイ女なんだが、あの男まさりな性格だけが玉にキズだな」(海賊・談)。アネゴ口調で一人称はもちろん「あたい」、という実にいいキャラです。ハッキリ言って好みです(笑)。要チェック。
ところで、このひといったい何歳なんでしょう?『知られざる伝説』の挿画ではどうみても十代?とのことですが、いくらなんでも十代ではリアリティがないし、海賊が「イイ女」と言ってるということは少なくとも二十歳は越えてるんじゃないでしょうか。小説版では「二十代後半」で「髪を短く切」った「男装の麗人」となっています。ただこのキャラ(名前はオルシェ)は言葉は普通の男言葉だし、一人称は「わたし」だし(こだわる)、ゲームに忠実というよりは独自の解釈をしたのでしょう。これでオルテガに惚れてるとかいう設定だったらイイ話なんですけどね。
閑話休題、16歳(+α?)の女勇者に対する態度も年上っぽいし(単に性格かもしれませんが)、手下の海賊が「イイ女」と言うニュアンスから少なくとも二十歳、「二十代後半」でもおかしくはないですが個人的な希望としては二十代前半くらいであってほしいです。ただ、いい歳して「あたい」もないでしょうから、かなり微妙なところでしょう。